VAL テニス動作モーションキャプチャデータベース

豊橋技術科学大学 情報工学系 画像工学研究室

向井 智彦 栗山 繁


概要

本モーションキャプチャデータベースは,科学研究費補助金・若手(B)・19700090「人体動作データの運動学的スキル解析と可視化」と,堀情報科学振興財団第 16 回一般研究助成の一環として構築されました.本プロジェクトでは,テニスの技能向上において重要なポイントを,計測動作データの運動学的な分析を通じて自動抽出することを目指しています.さらに,3 次元コンピュータグラフィクス技術を用いて,分析結果を効果的に可視化するツール群を開発しています.このたび研究期間の第一期が終了しましたので,本プロジェクトで収集,利用したデータをさらに幅広く活用してもらうために,計測動作データと関連資料を公開します.

公開データの取り扱いについて

本ホームページに掲載された動作データ,画像,ビデオ,ドキュメント,ソフトウェア等,全てのデータの著作権は本研究室に帰属します.これらのデータの利用や改変,転載,第三者への譲渡等は,研究活動などの非営利目的においてのみ自由としますが,その際には必ず出典を明記して下さい.営利目的での利用は固く禁じます.なお,これらのデータを利用して実施された研究成果を発表される際には,本研究室へご一報いただければ幸いです.


データベースの構成

モーションキャプチャ装置の概要

全ての動作データは,豊橋技術科学大学が所有する光学式モーションキャプチャ装置(VICON社製)によって撮影しました.約 4×4 メートルの撮影範囲の中で素振りを行う様子を,12 台の赤外線,可視光線カメラを用いて毎秒 100 フレーム,ミリメートル単位のデジタルデータとして撮影しています.

Mocap studio
図.モーションキャプチャスタジオ

被験者と動作の種類

被験者はサーラスポーツのテニスレッスンコーチ 20 名(男女各 10 名)とレッスン受講女性 4 名,豊橋技術科学大学公式テニス部男子部員 13 名,本研究室の男子学生 2 名,そして私の計 40 名で構成されています.各被験者はテニスの基本ショット(ストローク,ボレー,スマッシュ,サーブ)を,それぞれの普段のフォームで素振りしています.そのため,バックハンドの両手打ち/片手打ちや,ショットの球種(フラット,スピン,スライス等),スイングの高低差などは統一されていません.計測したショット動作の一覧を以下にまとめます.具体的な動作の一例は下のビデオの後半に収録されています.


QuickTime movie
モーションキャプチャ説明ビデオ

QuickTime: 45.9 MB, with Audio
720×480, 3:05

表.計測ショット動作一覧
 フォアハンドストローク   球種その 1×3 スイング(低→中→高) 
球種その 2×3 スイング(低→中→高)
バックハンドストローク 球種 1×3 スイング(低→中→高)
球種 2×3 スイング(低→中→高)
ボレー フォアハンドボレー×3 スイング
(低→中→前進しながら高)
バックハンドボレー×3 スイング
(低→中→前進しながら高)
スマッシュ 開始位置で停止して 1 スイング
少し前進して 1 スイング
後退しながら 1 スイング
サーブ ファーストサーブ
セカンドサーブ

動作データ仕様

動作データは,計測マーカーそのものの座標データを収録した C3D ファイルと,仮想骨格構造の大きさと関節角度データを収録した BVH ファイルの 2 種類で公開します.それぞれのファイル形式の特徴を簡単にまとめます.これらの詳細については他の書籍やホームページをご参照下さい.

 C3D   C3D ファイルは,計測マーカーの 3 次元位置を直接記録したバイナリ形式のファイルフォーマットです(C3D.org
 このファイル形式には,モーションキャプチャの専用ソフトウェア(vicon IQ 等)や MotionBuilder などのソフトウェアが対応しています.
 なお,本データベースにはノイズや欠損を含むオリジナルの計測データと,手作業によってノイズや欠損を修正した二種類のデータを収録しています.さらに,手作業で修正したデータについては,計測マーカー座標をテキスト形式でも出力しています.
 BVH   BVH ファイルは,計測マーカーの位置データをもとに推定された,人体の関節角度データを格納したテキスト形式のファイルフォーマットです(Biovision BVH
 このファイル形式には,多くの商用,非商用ソフトウェアが対応しており,またテキスト形式なので独自のプログラムから容易に読み込むことができます.
本データベースでは,人体の骨格構造を大幅に単純化した下図に示すような骨格構造を採用しており,e-frontier 社の Poser で直接読み込めます.

下左図は,BVH ファイルで採用している仮想骨格構造の模式図を示します.1つの節点に複数の名前が割り振られていますが,これは複数の仮想関節が 1 つの節点を共有していることを示します.一方,下右図は C3D ファイルと BVH ファイルの座標系の差異を表しています.いずれも右手座標系を採用していますが,BVH ファイルは鉛直上方向を +Y 軸とするのに対し,C3D ファイルは +Z 軸方向としています.

skeleton coordinate
図.仮想的な骨格構造と関節名一覧 図.座標系の構成

計測マーカー一覧

被験者への計測マーカーの取り付け位置と,それぞれの計測マーカーの名前を下図にまとめます.基本的に,マーカーは四肢の関節を挟むように取り付けていますが,腰回りはやや多めに設定しました.これらの計測マーカー位置をもとに,関節の回転中心位置を近似し,独自の計算方法によって仮想骨格の関節回転量を推定しています.

fullbody body front body_back
neck arm leg

データ一覧

計測動作データの一覧を示します.全てのデータは zip アーカイブ形式で圧縮しています.名前(イニシャル),年齢,身長,体重,経験年数の項目は,計測時の各被験者からの自己申告をもとに記載しています.なお,被験者番号は計測作業の時系列順に割り当てたもので,特別な意図はありません.

※なお,計測ノイズの影響を除去できなかったデータや,被験者から許諾を得られなかったデータは非公開としています.

番号 名前 性別
(M/F)
年齢
(才)
身長
(cm)
体重
(kg)
経験年数 コーチ:C
学生:S
c3d
(未加工)
c3d
(手動補間)
c3d
(テキスト)
bvh 3Dビューワー
1 TM M 28 172 71 6年 0ヶ月 S - c3dm01 c3dtxt01  bvh01  -
2 KH M 21 176 63 6年 0ヶ月 S c3dr02 c3dm02 c3dtxt02 bvh02 viewer02
3 RF M 21 164 54 6年 0ヶ月 S c3dr03 c3dm03 c3dtxt03 bvh03 viewer03
4 TY M 32 167 64 16年 2ヶ月 C c3dr04 c3dm04 c3dtxt04 bvh04 viewer04
5 YH F 35 150 45 13年 4ヶ月 C c3dr05 c3dm05 c3dtxt05 bvh05 viewer05
6 AS F 29 153 60 12年 7ヶ月 C c3dr06 c3dm06 c3dtxt06 bvh06 -
7 KM M 38 172 60  23年 3ヶ月  C c3dr07 c3dm07 c3dtxt07 bvh07 viewer07
8 SM M 20 171 54 4年 0ヶ月 S c3dr08 c3dm08 c3dtxt08 bvh08 viewer08
9 TM M 20 180 63 0年 3ヶ月 S c3dr09 c3dm09 c3dtxt09 bvh09 viewer09
10 JO M 22 174 67 5年 3ヶ月 S c3dr10 c3dm10 c3dtxt10 bvh10 viewer10
11 KI M 22 167 70 7年 3ヶ月 S c3dr11 c3dm11 c3dtxt11 bvh11 viewer11
12 MY F 37 162 49 6年 0ヶ月 C c3dr12 c3dm12 c3dtxt12 bvh12 viewer12
13 TU F 22 149 46 6年 0ヶ月 C c3dr13 c3dm13 c3dtxt13 bvh13 viewer13
14 HF F 37 156 51 20年 0ヶ月 C c3dr14 c3dm14 c3dtxt14 bvh14 viewer14
15 YN M 20 164 58 4年 5ヶ月 C c3dr15 c3dm15 c3dtxt15 bvh15 -
16 YT M 23 167 55 8年 3ヶ月 C c3dr16 c3dm16 c3dtxt16 bvh16 viewer16
17 KA M 21 171 64 5年 3ヶ月 S c3dr17 c3dm17 c3dtxt17 bvh17 -
18 NS M 23 180 72 8年 0ヶ月 C c3dr18 c3dm18 c3dtxt18 bvh18 viewer18
19 TS M 20 167 57 5年 5ヶ月 C c3dr19 c3dm19 c3dtxt19 bvh19 viewer19
20 RH M 20 166 55 5年 0ヶ月 C c3dr20 c3dm20 c3dtxt20 bvh20 viewer20
21 AY F 39 152 50 23年 0ヶ月 C c3dr21 c3dm21 c3dtxt21 bvh21 viewer21
22 NM F 30 153 51 14年 0ヶ月 C c3dr22 c3dm22 c3dtxt22 bvh22 viewer22
23 TS M 20 179 73 5年 3ヶ月 C c3dr23 c3dm23 c3dtxt23 bvh23 viewer23
24 NK M 24 176 67 9年 2ヶ月 C c3dr24 c3dm24 c3dtxt24 bvh24 viewer24
25 SK F 26 172 54 1年 8ヶ月 S c3dr25 c3dm25 c3dtxt25 bvh25 viewer25
26 YK F 27 156 45 1年 8ヶ月 S c3dr26 c3dm26 c3dtxt26 bvh26 viewer26
27 TA M 23 162 48 8年 0ヶ月 S c3dr27 c3dm27 c3dtxt27 bvh27 viewer27
28 KT M 21 165 53 6年 3ヶ月 S c3dr28 c3dm28 c3dtxt28 bvh28 -
29 KM F 22 156 52 6年 3ヶ月 C c3dr29 c3dm29 c3dtxt29 bvh29 viewer29
30 AK F 24 152 46 9年 0ヶ月 C c3dr30 c3dm30 c3dtxt30 bvh30 viewer30
31 KT M 32 167 60 14年 7ヶ月 C c3dr31 c3dm31 c3dtxt31 bvh31 viewer31
32 YI F 23 166 57 3年 0ヶ月 S c3dr32 c3dm32 c3dtxt32 bvh32 viewer32
33 TI F 28 161 53 1年 8ヶ月 S c3dr33 c3dm33 c3dtxt33 bvh33 -
34 KA M 21 172 67 3年 0ヶ月 S c3dr34 c3dm34 c3dtxt34 bvh34 viewer34
35 KO M 23 175 63 3年 0ヶ月 S c3dr35 c3dm35 c3dtxt35 bvh35 -
36 FT F 19 155 46 12年 0ヶ月 C c3dr36 c3dm36 c3dtxt36 bvh36 -
37 MK M 22 177 67 3年 4ヶ月 S c3dr37 c3dm37 c3dtxt37 bvh37 viewer37
38 MT M 22 173 60 6年 4ヶ月 S c3dr38 c3dm38 c3dtxt38 bvh38 viewer38
39 TA M 22 168 62 7年 0ヶ月 S c3dr39 c3dm39 c3dtxt39 bvh39 viewer39
40 YK M 23 168 66 3年 5ヶ月 S c3dr40 c3dm40 c3dtxt40 bvh40 viewer40

3Dビューワーの使用法

本研究室作成のビューワーソフトウェアを利用することで,収録データの内容を3次元CGアニメーションで確認できます.なお,あくまでも開発版のソフトウェアにつき,使用に伴って発生したコンピュータの不具合や誤動作に対しては責任を負いかねます.また,ソフトウェアへの機能追加やソースコードの開示等のリクエストには一切お答えできませんのでご了承下さい.


関連研究成果

  1. 向井智彦, 栗山繁, "テンソル近似を用いた動作補間の多重解像度制御", 信学論,Vol.J91-D, No.12, pp.2973-2982, 2008.12
  2. 脇坂健一, 向井智彦, 栗山繁, "時空間的特徴と帰納推論を用いた動作データの検索", 情報技術レターズ(FIT2007講演論文集), LI-006, 2007.9
  3. Tomohiko Mukai, Shigeru Kuriyama, "Pose-Timeline for Propagating Motion Edits", ACM SIGGRAPH/Eurographics Symposium on Computer Animation 2009, pp.104-113, 2009.8.
  4. Tomohiko Mukai, Shigeru Kuriyama, "Multilinear Motion Synthesis with Level of Detail Controls", Pacific Graphics 2007, pp.9-17, 2007.10.
  5. Tomohiko Mukai, Ken-ichi Wakisaka, and Shigeru Kuriyama, "Generating Concise Rules for Retrieving Human Motions from Large Datasets", Computer Animation and Social Agents 2009 (CASA2009), Short Paper, pp.45-48, 2009.6.
  6. Tomohiko Mukai, Ken-ichi Wakisaka, and Shigeru Kuriyama, "Rule-based Retrieval of Human Motion Data Using Inductive Logic Programming", ACM SIGGRAPH/Eurographics Symposium on Computer Animation 2007 (SCA2007), Posters and Demos, pp.22-23, 2007.8.
  7. 向井智彦,栗山繁,"時間的特徴解析に基づく運動タイミングの編集",Visual Computing/グラフィクスとCAD 合同シンポジウム 2007, pp.33-38, 2007.6.
  8. 脇坂健一,向井智彦,栗山繁, "帰納推論を用いた動作データのセマンティクス解析", Visual Computing/グラフィクスとCAD 合同シンポジウム 2007, pp.151-156, 2007.6.
  9. 向井智彦, 栗山繁, "2次元姿勢タイムラインを用いた動作データ編集",情処学グラフィクスとCAD研究報告,Vol.2008, No. 109, pp.25-30, 2008.10.
  10. 脇坂健一, 向井智彦, 栗山繁, "運動特徴解析と帰納推論を用いた人体動作データの分類",第21回人工知能学会全国大会,CD-ROM(1H3-5), 2007.6.

謝辞

本研究は,科学研究費補助金・若手(B)・19700090「人体動作データの運動学的スキル解析と可視化」の援助により実施されました.また本研究の一部は,堀情報科学振興財団第16回一般研究助成による支援を受けました.

本モーションキャプチャデータベースの構築にあたり,サーラインドアテニススクール豊橋の松井和彦氏ならびに山崎達也氏には,計測実施にあたってのアドバイスやスケジュールの調整などに大変ご尽力いただきました.また,豊橋技術科学大学公式テニス部各位には快く作業に協力してもらいました.画像工学研究室の学生諸氏には,連日の計測作業や動作データ処理など,非常に骨の折れる作業を引き受けてもらいました.本プロジェクトの遂行にご協力頂いた皆様に心よりお礼申し上げます.


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Last modified: 2009/10/01
(since 2009/10/01)
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